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水質汚濁防止法は第二の電気用品安全法か??…その1 [秘境案内]

 最近温泉好きで非常に論議をかましている問題として、「水質汚濁防止法」の改定というのがあるのですが....
元々この法律自体は環境汚染が問題化された1970年に制定されたもので、「工場や事業場からの排水を規制することによって、川や海などの汚濁の防止を図り、人々の健康の保護や生活環境を保全し、不幸にも排水のために人の健康にかかる被害が生じた時には事業者の損害賠償の責任について定めることを目的」(水質汚濁防止法第一条を抜粋)としているものですが、今回問題になっているのは、2007年7月に改定される部分になります。
その趣旨を端的に言えばこういうことになりますが…:

この法改定により、長期にわたり摂取すると健康被害を招くとされるホウ素やフッ素を排出する基準が強化され、2007年7月以降ホウ素やフッ素を排出する事業場として最も数が多い温泉旅館に対して排水規制の取締り対象になり、排水規制が行われない場合は除去装置を買うなどの対策を行うまで営業停止等の処罰が科せられることになる

ずばり一言…こんなバカ極まりない改定案を考え出した環境省に小一時間問いつめてやりたいですね!!(`_´)

 確かにホウ素やフッ素の人体への影響は昔から言われていることですし(現にこの排出基準の強化については、世界保健機関(WHO)の健康被害報告を受けたものである)、これが工場からの排水について強化されるとかいうのであれば話は分かりますが、ただ単に「温泉の泉質自体にホウ素やフッ素が含まれているから」という括りだけで温泉を対象にするというのが全くもって納得が出来ません。
#ホウ素がこれまでは500mg/l以上だった基準が10mg/l以上、フッ素がこれまでは15~50mg/lだった基準が8mg/l以上と極端に変わるからと言うことですが....
そもそも温泉は自然湧出しているものですから、自然湧出された物に対して排水規制を加えること自体噴飯物ですし、(個々の体質や個々の温泉の泉質にもよりますが)一般的に身体に良かれこそあれ悪いことは無いでしょうから、「温泉」ということで一括りにして規制対象にすること自体おかしいとしか思えないのですが....
何より、今まで温泉宿等が温泉を排出することでホウ素やフッ素の人体への影響が言われてきたかというと、全くそういう話は聞かないわけで、そうなるとこの法改定で「温泉」を規制対象にすることで、果たして今回の規制で「川や海などの汚濁の防止を図り」得るような、ホウ素やフッ素の規制に対する環境効果は見られるのか…換言すれば、温泉排出とホウ素・フッ素との因果関係が全くないままに一概に規制対象にされてしまっているのですよね。


 まあ、百歩譲って「温泉の泉質自体にホウ素やフッ素が含まれているから」という理由で「温泉」そのものを規制対象にするのであれば、まだ分からなくもないのですが、実はそんな単純な問題ではないのがこの法改定の最大の問題でして....
極論を交えて一言で言えば…
この法改定は「源泉掛け流し」を行う至極真っ当な温泉旅館のみが負担を強いられ、「紛い物」の温泉が幅を利かせることになる、まさに悪貨は良貨を駆逐する法内容でしかない代物なのですね!!(`_´) 
では、その問題点について順に説明していくと…




1.規制対象は「温泉地」ではなく、「温泉旅館」である
 「温泉」そのものを規制対象にするのであれば、例えば群馬県の名湯草津温泉のように水質を石灰で中和する工場を造るなどの措置が加えられているケースもあるのですが、上述している通り今回の法的規制対象になるのは「温泉地」ではなく、「温泉旅館」になります。
あくまでも個々の旅館毎に、旅館で源泉をそのまま排水していないかを取り締まるのが目的になるということです。
そうなると、個々の旅館毎に除去装置の購入等負担を強いることになる訳で、結局は温泉旅館の存続に強く関わってくる問題になってくるということになります。
(その点については、後で詳しく掘り下げます)
しかも今回指摘を受けているのは、玉川温泉、草津温泉、松之山温泉、有馬温泉、道後温泉、別府温泉等々、全て古来から湧いて流れる自然湧出温泉の各旅館であり、前述したように、「源泉掛け流し」を行う至極真っ当な温泉旅館のみが負担を強いられいることに他ならない訳です。




2.規制対象は「温泉旅館」であり、「日帰り施設」は対象にならない
 更に分からないのは、この法的規制対象は「温泉旅館」であり、共同浴場や最近よくある「日帰り施設」は対象にならないということなんですね。
その理由は、ずばり「厨房施設を使って食事を提供していないから」だそうですが....
はっきり言って…厨房とフッ素・ホウ素と何の関連があるのですかぁ??(`_´) 
どうも、当初からの事業場一覧に「旅館」が入っていたがゆえにそのまま解釈したにすぎないもののようで、その中に「日帰り施設」や「共同浴場」等は含まれないというのがその趣旨のようですが....
(ところで、最近では宿泊施設は無くても、健康センターばりに食堂のある日帰り施設も多々ありますが、そうしたところはどうなるのでしょう??)
そうなると、どんなにフッ素・ホウ素成分が濃く含まれていても、「日帰り施設」は法的にはお咎めがないということになりますし、また同じ温泉を排出しても、「温泉旅館」を止めて「日帰り施設」に転向すれば法的には全く問題がないということになりますが....これって、本来の「環境」に対する対策では無くなってますよねぇ??
繰り返しになりますが、あくまでも、この法律は「排水を規制することによって、川や海などの汚濁の防止を図」ることが目的で、温泉の成分における「環境」に対する対策ことが目的であるのですが、これでは業務内容が変われば問題がないということで、趣旨を完全に取り違えているとしか思えません。




3.結局実益があるのは誰なのか??
 そうなると、この規制強化に伴って主だって温泉旅館側で考えられる方法は以下の3つでしょうか:

・1)ホウ素やフッ素を規制対象の基準値以下にするように温泉自体を地下水等で薄める

・2)高額でも除去装置を購入する

・3)温泉旅館で温泉を出さない

1)の場合でも考え方は2通りあって、元々の湯船に入れる温泉を水で薄めるか(温泉を循環させて泉質を薄めるというやり方もある)、湯船等から排出された温泉を水で薄めるかという考え方が出来るでしょうが....
前者だと、一昨年から温泉偽装が主だって発覚して、利用者の目が厳しくなっているこのご時世に温泉を希釈するとなると、まさに利用者のニーズと逆行したことを行っていることになる訳で、結局は自分の首を絞めることになりかねません。
だからと言って、後者の場合でも、確かに利用者ニーズは確保できるでしょうが....実際にそれを行うとなると、例えば新たに井戸を掘って地下水で温泉排水を薄めて放流するという考えもあるようですが、それが果たして本来の「環境」に対する対策になるかどうかは甚だ疑問としか言いようがありません。

そうなると、2)の除去装置の購入と言うことになるのですが、除去装置は安くても一台3000万円はするそうで、大旅館ならまだしも、一軒宿の旅館や民宿等でそこまでの設備投資はかなりの負担になるでしょうし、第一そこまでの負担が出来るとは到底思えません。
また、除去装置の購入に伴って設備投資の負担が出てくるとなると、その負担分は利用者側に跳ね返ってくる…つまり、2007年7月以降、宿泊料金が高くなったりすることも懸念されます。
(そうなると、それに伴う旅館側の便乗値上げということも懸念されますが....)
環境省側は「業界が求める価格帯の装置開発は困難」との見解を出しているようですが、そんな一方的に負担を強いる法改定って一体…と思いますし(ある種の開き直りとしか思えない)、またこの法改定がメーカーへの間接的利益供与を目的にしているように見えなくもないのですが....

また、現に3)のように、環境省の指導によりと貼紙をした上で、旅館内の大浴場を閉鎖し、外湯に誘導するということを考えている温泉地も出てきているようで、事実上のボイコットと捉えることも出来るでしょう。
あるいは更に考えれば、温泉旅館を止めて日帰り施設に転向させるところが出てくるかもしれません。

 いずれにせよ、この法改定では、実益を伴わない目的のために、旅館側も利用者側も共に負担を生じるばかりで、結局一番実益を伴うのは環境省とメーカーということになる訳ですね!!(`_´)




4.大多数に周知されぬ間に法律は改定されていた
 実はこの水質汚濁防止法、既に2001年に法的に改定はされており、問題の排水規定については2007年6月まで猶予期間が設けられており、その猶予期間が切れる2007年7月以降に問題が生じるということなのですが....
しかし、この問題は環境省等で広く周知されていた訳でもなく、またマスコミ等で殆ど取り上げられることも無く、今年の11月22日付の「日経流通新聞MJ」の一面に「温泉に排水規制 旅館ピンチ 来年にも新基準」という記事が取り上げられてから、事の重大さが広まった…という訳です。
(実際にGoogle Newsで検索しても、この問題について取り上げている記事は一つもなかった)

 さて、この展開、どこかで見たことがないでしょうか…まあ、別Blog「温泉街の情報雑貨店」 でも盛んに取り上げているレコード輸入権に係る著作権法改定の件もあるのですが(詳細は当該Blogのカテゴリー「輸入権問題」を参照)、今年の冬から春にかけて盛んに論議された電気用品安全法(PSE法)と非常に似ているように思えてならないんですよね!!
今更な話ですが、電気用品安全法(PSE法)とは、2001年4月に施行された法律で、電化製品に安全確認済みマーク「PSEマーク」を付けて製造・販売するよう義務付けるという法律です。
今年の3月31日までは同法の猶予期間で(2008年3月までないし2011年3月まで猶予期間がある製品もある)、PSEマークなしの製品でも販売可能なものの、4月以降は、猶予期間が5年と定められていたシンセサイザーやアンプ、レコードプレーヤー、電源内蔵型ゲーム機、テレビ、電気洗濯機など259品目で、PSEマークがないと販売できなくなる…ということで、経済産業省から猶予期間中に全く周知が図られないまま猶予期間を終えようとしていた矢先に問題が大きくなり、各Bloggerやミュージシャン等から反対意見が続出し、マスコミ等も反対意見にするようになった結果、実際に施行されるとほぼ当初の経済産業省の趣旨は骨抜きにされた、という経緯があります。
このPSE法も、法案成立時には誰も本来の趣旨は知られておらず、猶予期間を設けてあったにも関わらず全く省庁は周知もせず、更に本来対象外であった「中古品」についても対象を広げるということを大臣が明言し波紋を広げたことで、反対活動に火を付けたというのが主な流れですが....

 確かにこの水質汚濁防止法は、正直言ってPSE法ほど誰もかれも対象になるという法律でもないですし、またPSE法ほど身近な問題ではないかもしれません。
しかし、PSE法と同様に本来国民に対して法の趣旨や猶予期間等について全く説明してこなかったという点では、現在の法律施行のあり方について大いに問題があることには違いないですし(それは今の著作権法改悪…保護期間を死後50年から70年に引き上げようとしている…についても同じですが)、何より、杓子定規な法的運用により、日本古来から健康保養、療養に活用してきた「源泉かけ流し」温泉が一気に消える危機を迎えることになるという点は、日本の温泉文化を守る上でも大いに問題があると言えるでしょう。

まずはマスコミ等、各方面にこういう問題があることを周知し、世論を動かしていくことが望まれるでしょう。

#この水質汚濁防止法問題については、以下のサイトが参考になります:
新たな温泉問題ぼっ発!
 (←AllAbout「日本の宿」 11月23日付記事:井門 隆夫さんという方が記事を書かれていますが、この問題について非常に分かりやすく書かれており、お奨めです。なお、今回の投稿に関しては、この記事を全面的に参照した上で書かせていただきました)

悪法・源泉かけ流しの危機
 (←mixi:[(温泉の中でも)源泉かけ流し限定] コミュ:店主はこのコミュでこの問題を知りました。まだ投稿数は少ないですが、今後盛り上がるきっかけになればと思います)

温泉に排水規制 ~お役所の「お役所仕事」 ~水質汚濁防止法
 (←Blog「文句があったらベルサイユへいらっしゃい!」:恐らくこの問題をBlogで最初に取り上げた記事だと思われますが....こちらも端的に問題を分かりやすく取り上げられており、お奨めです)

 何でも前述のmixi:[(温泉の中でも)源泉かけ流し限定] コミュのお話では、「温泉教授」として名高い松田 忠徳氏や「道新」こと北海道新聞がこの問題について関心を持っているとのことですが....
更に関心を持つ人が増えることを望むばかりです(^^)v。


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